今回は転職を考えられている方、もしくは新卒での就職活動をしている方に向けて重要な見極め方や考え方などを様々な角度から解説していきます。
多くの人を次々と採用し、長時間労働を強いて、ときにはパワハラやモラハラを用いながら労働者を酷使する「ブラック企業」。2013年には新語・流行語大賞も受賞したその存在は大きな社会問題となり、数年を経た現在ではブラック企業を取り巻く認識や環境も変わりつつあります。そもそもブラック企業とはどのような特徴のある企業なのか、ホワイト企業との違いは何かなど、改めて解説していきます。
ブラック企業の特徴
残業時間が圧倒的に多い
ブラック企業は、労働者に対して長時間労働やノルマを課すのが特徴です。一般的な残業平均時間を平気で超えていることが珍しくありません。一般的な残業の平均時間は月に約20~40時間ぐらいと考えられています。しかしブラック企業の場合、月100時間以上も珍しくありません。
中には「残業になるのは個人の仕事が遅いから」という理由でサービス残業を強いる企業もあります。背景を考えると、人員不足が挙げられるでしょう。労働者が少なければ、それだけ1人に対する仕事量が増えるのは必然です。どんなに仕事を早く終わらせようとしても定時までに終わらず残業となります。
休日が少ない
休日が圧倒的に少ないブラック企業も多いです。平均的な企業の年間休日数は約120日くらいです。ただ、ブラック企業の場合、100日以下だったり、極端な所だと80日以下という所もあります。また、営業職の場合では休日でも仕事に関連する電話対応をしなければならないことも珍しくありません。そのためほとんど休みが取れなくなり、精神的にも追い詰められることもあるのです。
休日が少ないと家族と過ごす時間が減り、家庭環境に影響を及ぼす可能性も考えられます。残業が増えても、適切な給料をきちんと払ってくれる企業ばかりではありません。そのためたまの休みがあっても疲れが溜まるだけになり、モチベーションも下がり会社を離れることになるのです。
パワハラ・モラハラがある
パワハラ・モラハラがある企業はブラック企業だと言えるでしょう。近年、パワハラやモラハラなどのハラスメントが社会的に注目されるようになりました。社会的にハラスメントを弾圧する傾向があるにも関わらず、いまだにハラスメントが横行しているような企業は確実にブラック企業と言えるでしょう。
パワハラやモラハラの特徴として、時間の制約が大きく精神的に追い詰められてしまうことが挙げられます。パワハラやモラハラがあると、疲労による負のスパイラルからなかなか抜け出せず、1人で思い悩んでしまう傾向にあります。
スキル構築を支援する制度がない
スキル構築を支援する制度がないことも、ブラック企業の特徴といえます。近年では、多くの企業が資格取得支援制度や自己啓発セミナーなどの制度を取り入れています。こうした制度があることによって、社員は自主的にスキルアップができたり、モチベーションを向上させたりできます。
しかし、ブラック企業と言われる企業には、こうしたスキル支援制度がない傾向にあります。また、昇給や昇格があると求人にありながら、実際には運用されないというケースもあります。スキルの構築を支援する制度が整っていない企業は、ブラック企業である可能性が高いです。
社員の声をくみ取る機会がない
ブラック企業では、社員の声をくみ取る機会がありません。通常の企業であれば、常に社員の声をくみ取ることができる体制が整っており、社員の意見を迅速に経営に反映させることができます。そうすることで、社員のモチベーション向上や職場環境の改善が行えるからです。
しかしブラック企業の場合は、社員の声をくみ取る機会や社員が意見を言える機会が滅多にありません。ブラック企業は社員のことを考えていないからです。利益最優先で、社員のモチベーションや職場環境は二の次になってしまうのです。そもそも社員の声が反映される企業であれば、上記したようなブラック企業の特徴は改善されるでしょう。ブラック企業の社員は意見を述べることができず、会社のいいなりになってしまうのです。
ホワイト企業の特徴
福利厚生が手厚い
ホワイト企業の特徴としては、福利厚生が手厚いことが挙げられます。福利厚生は給料以外の報酬と考えればいいでしょう。福利厚生の目的は、労働力の確保と労働意欲を向上させることです。具体的には社会保険の負担、住宅手当や家賃への補助、家族手当や交通費、健康診断への補助、社員食堂などがあります。
他にも育児に関することやユニフォームのクリーニング代、慶弔、部活動への補助、企業と提携している施設やサービスを特別料金で使用できることなども含まれています。ホワイト企業と呼ばれる企業は福利厚生が手厚いため、金銭的な負担に対してプレッシャーが少ないと言えるでしょう。
離職率が低い
離職率が低いのもホワイト企業を見分けるポイントになります。働きやすい環境が整っているのに、自分から退社する人はほとんど居ません。ホワイト企業から転職する場合は、前向きな理由が多いでしょう。例えば起業したい、他業界に行きたくなった、同じホワイト企業だけれども給料が少しいい企業に転職したいなどがあげられます。
ホワイト企業かどうか見極めるには、入社3年間の離職率が高いか低いかをチェックすることです。ただし、離職率は一般的に公開されていません。また口コミサイトや就職四季報に情報が掲載されていることがあるため、チェックしてみてください。
女性が働きやすい環境がある
ホワイト企業かどうかは、女性の働きやすさも大きな判断材料になります。女性の社会進出が一般的になりつつありますが、ホワイト企業はそのことを重視し、働きやすい環境を整えている所が多いのです。女性にとって子供を産むというのは、人生の中でも大きなイベントになります。
しかし、企業の中には産休や育休に対して否定的な所も少なくありません。産休や育休を取るぐらいなら、会社を辞めて欲しいと考える企業もあるのです。産休があったとしても、復帰した時には自分の居場所がなくなっているということもあります。ホワイト企業ではそういうことも少なく、女性の人材でも大切にしていることが分かるのです。
ワークライフバランスが重視されている
ワークライフバランスが重視されていることも、ホワイト企業の特徴だといえます。ワークライフバランスとは、仕事とプライベートをうまく両立することを指します。「プライベートが充実していると、仕事もはかどる」という相乗効果から、近年では「働き方改革」と銘打ってこのワークライフバランスが注目されています。
ワークライフバランスには、育児・介護制度と男女平等の2つが含まれており、この2つの制度が整っている企業はワークライフバランスがしっかりとしていると言えるでしょう。その指標として、例えば育児制度では厚生労働省の「くるみん」認定制度などがあります。他にも様々な認定制度がありますが、認定を受けている企業はワークライフバランスが整っていると考えていいですし、ホワイト企業である可能性が高いでしょう。
メンタルヘルスの窓口が設置されている
メンタルヘルスの窓口が設置されている企業も、ホワイト企業である可能性が高いです。メンタルヘルスとは「心の健康」のことを指します。近年、人間関係や長時間労働など仕事に対する悩みやストレスを感じる人が増加しています。そうした人の悩みに答えるのがメンタルヘルスの窓口です。
従業員が心の健康に起因して仕事や私生活に支障をきたすことがないようにと、近年は窓口を設置する企業が増えつつあります。こうした窓口が企業に設置されていることは、その企業が社員の悩みやストレスのことをしっかりと考え対処しているということであるため、ホワイト企業である可能性が高いと言えます。メンタルヘルスについて取り組んでいるかどうかは企業のHPで調べることができるので、チェックしてみてください。
ブラック企業とホワイト企業の違い
経営サイドが従業員をどう捉えているかという考え方の違いが大きいでしょう。
ホワイト企業において人材は、企業にとって重要な経営資源であり、将来にわたって企業を支えていく根幹となる存在として捉えるはずです。そのために従業員を大切にし、働きやすい環境を整えていると考えられます。待遇、福利厚生、社内環境の整備などに加えて、プライベートの充実にも配慮したワークライフバランスを視野に入れる企業が多いのもその表れの一つでしょう。
そしてホワイト企業では働きやすい環境が整っているために従業員の定着率が高く、仕事に対する意欲が生まれ、業績にも結びつくといった好循環が生まれます。
これに対し、ブラック企業にとっての人材は戦力ではありますが、取り替え可能な資源です。少なくともそう捉えている企業が多いと考えられます。そのために働く環境は整備されているとは言えず、従業員の離職率も高くなっていきます。それゆえ瞬間的に業績がアップすることはあっても、安定的・継続的に利益を上げながら成長していくのは難しく、そうした評価が広まれば新しい人材の確保もままならなくなるという悪循環に陥りやすくなります。
ブラック企業とホワイト企業の共通点
ブラック企業でもホワイト企業でも変わらない、共通点についても解説していきます。ブラック企業とホワイト企業でも、どの企業でも変わらない共通点は、以下の2つが挙げられます。
・業務効率化
ブラック企業でもホワイト企業でも、業務効率化については課題が大きく、無駄な会議や紙で処理するようなアナログな部分をまだまだ多く残しています。業務が効率的になればなるほど、ますます働きやすくなるため、どんどん良くなっていってほしいものです。
・職場の人間関係
ブラック企業でもホワイト企業でも変わらないのが、職場の人間関係です。こればかりは会社によるところが多いです。転職する際は、口コミなどで現実について見ておくと、失敗のリスクを減らせます。
まとめ
ここまで様々な観点からブラック企業とホワイト企業について解説してきましたが、一つ言えることは、どんなに大きな会社であってもブラック企業は存在しますし、どんなに小さな会社でもホワイト企業は存在するということです。もちろん傾向はありますが、ブラック企業なのかホワイト企業なのかを決めるのは「あなたが何を求めるか」によって大きく変わるのではないでしょうか。
「とにかく給料が高ければどれだけハードな仕事でも大丈夫!」という方もいれば「給料は安くてもいいから福利厚生がしっかりしている企業で働きたい!」という方もいらっしゃいます。
上記を参考に皆様が何を求める条件はどこになるのかを見つめ直してみてください。