昔は一度入社した会社で終身雇用されるという雇用形態が一般的でしたが、今や20代で入社した会社を3年以内に3人に1人が退職する時代になりました。ですが、20代で転職をすることで希望する転職先に採用されないのではないかと不安を抱える方も多いはずです。そこで今回はそんな不安を抱えるあなたに、20代の転職の現状から、20代で転職するメリットデメリットについて紹介します。
20代の転職の実態
１．キャリアの構築とスキル獲得の重視 ：20代はキャリアのスタート時期であり、多くの人が自分の将来の方向性を模索しています。スキルや経験を幅広く獲得し、自身の価値を高めるために転職を検討する人が多いです。
２．早期の転職傾向： 20代の間で短期間での転職が見られることがあります。これは異なる業界や職種を経験することで、自分に適した職場やキャリアを見つけるための一環として行われることが多いです。
３．終身雇用からの転換： 以前の日本では終身雇用が主流でしたが、20代の世代はその考え方が変わりつつあります。安定性よりも成長機会や働き方の選択肢を重視する傾向が見られます。
４．自己成長とワークライフバランスの重要視：若い世代は、自己成長やスキルアップだけでなく、健康的なワークライフバランスも重要視しています。過度な労働やストレスを避けるために、転職を検討する人が増えています。
５．新興分野への関心： テクノロジー分野やクリエイティブ分野など、新たな成長分野に対する関心が高まっています。これらの分野での求人が増える中で、転職を通じて自分の興味やスキルを活かすチャンスを追求する人が多いです。
６．転職支援サービスの活用：転職エージェントや転職サイトなどのサービスを利用して、求人情報を収集し、自分に合った職場を探す人が増えています。これにより、効率的に転職活動を行うことができます。
20代の転職の実態は、個々の目標や状況に合わせて多様です。キャリアのスタート時期として、自分の成長や幸福感を最大化するために転職を検討する人が多いです。
20代の転職率
厚生労働省の実施した、令和3年雇用動向調査によれば、20代の転職率はおよそ3割程度で推移しています。
| 20代前半 | 20代後半 | |
|---|---|---|
| 男性 | 15.3％ | 11.6％ |
| 女性 | 12.9％ | 13.3％ |
20代全体で見ると、男性と女性両方とも転職率に大きな差はありません。しかし年代ごとで見てみると、20代前半の方が転職率が高いことがわかります。20代前半は社会人として会社に入社したものの、職場が合わずに転職してしまう人が多いことが推測されます。
転職理由
20代は自身のキャリアパスを考え始める時期であり、転職活動を通じて自分に適した職業や職場環境を模索する人が多いです。20代が転職する理由の中には、共通するものがあります。
・給与が低い
給与の問題は20代の転職の大きな要因です。初めての就職活動では、業務内容や職場環境よりも就職先を見つけることに焦点を合わせるため、給与面での不満が後から生じることが少なくありません。また、生活費や将来的な家庭設立などのために収入を増やす必要がある場合、給与アップを目指して転職を考える人も多いです。
・休日が少なくワークライフバランスが取れない
休日が少なく、自己啓発の時間やプライベートな時間が取れないと感じると、ワークライフバランスが取れないという理由で転職を考える人もいます。特に、自分のライフスタイルに合った勤務体制を求める20代は、休日が少ない職場から完全週休二日制を取り入れた職場へ移る傾向があります。週休二日制と完全週休二日制では、ひと月あたりで取得できる休日数に違いがあります。新卒入社時に休日日数を把握しておらず、入社後に気づいて転職先を検討しだす方は実は多いです。
・業務量が多い
業務量が多いと感じると、ストレスが増加し、仕事に対するモチベーションが下がることもあります。また、過度の業務量は長時間労働や過労死を引き起こす可能性もあり、健康を害する可能性もあるため、業務量の問題から転職を考える人もいます。単純に一人当たりの業務量が多いと、段々と疲労が蓄積していきます。精神的にも負担がかかりはじめ、精神的負担からそもそも働くこと自体ができなくなることもあります。
・業務内容が合わない
初めての就職活動では、自分がどのような業務に適性を持っているか、また、どの業務が自分にとって有益であるかを正確に判断するのは難しいものです。そのため、実際に業務を経験してみて、自分の能力や関心に合わないと感じる場合もあります。社内でほかの部署に異動できれば問題ないですが、同じ職種のまま働きたい、そもそも会社から出たいと感じる方が転職に踏み切る傾向にあります。
・職場の人間関係で悩んでいる
職場の人間関係は、働く上で非常に重要な要素です。職場の雰囲気や上司・同僚との関係性が良好でなければ、仕事のパフォーマンスやモチベーションに影響を及ぼします。万が一職場の人間関係が悪い場合、部署内での解決が難しいこともあります。手っとり早く他の企業に転職して、根本から改善しようとする方も多いのです。
転職活動期間はどれくらい？
20代の転職活動に要する期間はおおよそ3ヶ月です。具体的には、「1ヵ月半以内」（42.9％）「3ヶ月以内」（47.6％）で9割以上の人が内定を得ており、平均的には3か月以内に内定が出る傾向にあります。背景には、年齢で合否を判断する企業が減少し若者の柔軟な発想力やポテンシャルを期待する企業が増加したことが挙げられます。
一方、年齢が上がると企業から求められる能力や・経験の水準は高くなるため企業と求職者の条件が一致するハードルは上がります。そのため30代～40代では転職に必要な期間が3ヶ月以上から半年、1年というデータもあります。このように、年齢が上がれば上がるほど転職活動は長期化する傾向にあり、20代での転職はその上の世代よりも有利かつ短期間で終えられるのです。
基本的に20代は転職市場で需要のある年代です。そのため、転職活動も比較的決まりやすく、短期で終えられる可能性が高いです。
ここでは20代が短期間で転職を終えられる理由を具体的に解説していきます。
1.ポテンシャルが重視されるから
20代はこれまでの経歴やスキルだけでなく、ポテンシャルを重視している企業が増えてきているため採用されやすい傾向にあります。さらに、20代はキャリアのスタート地点にいることが多く、キャリアアップ意欲が強いことも魅力の一つです。
どこの企業文化にも染まっていない人材なので「新しいアイデアが期待できそう」「自社の社風にも柔軟に馴染んでくれそう」など、採用側にもメリットがたくさんあります。
そのため、「20代は社会人として未熟」というよりは、今後の活躍・成長に期待して採用するという傾向が強く、短期間で入社まで決まりやすいのです。
2.給与の面で安心感があるから
企業が人材を採用するということは、それだけ人件費がかかるということです。30代で即戦力を求める場合、ミスマッチによる費用のリスクは大きくなります。
入社前の面接や事務手続きにも採用コストがかかっているため、一人当たりの費用は一口に1か月分の給料とは言い切れません。
一方、20代の若者を採用すれば、能力に応じて給与を上げることができます。そのため、仮にミスマッチが起きた場合でも、コスト面でのリスクは30代と比較して抑えることができます。
3.若さと新鮮さが求められる職種がある
若さを求める業界、企業も多く存在します。そのため、20代が有利に働くケースもあるのです。たとえば、ITやWeb業界などは新しい技術やトレンドに敏感な人材が求められます。
昨今の20代はデジタルネイティブと呼ばれ、新しい技術や最新のトレンドに詳しいことが多いです。ITやWeb業界は常に新しいアイデアや発想を求められるため、20代の新鮮さの需要は高く、20代は転職市場でも有利に働くことが多いです。
4.求人数が多い
20代の転職活動が短期間で終えられる理由の4つ目に求人数が多い点が挙げられます。若手採用に力を入れる企業も多いため、選択肢が広がり、内定を得やすいでしょう。
経験豊富な30代後半〜40代を高単価で採用するよりも、人件費を抑えつつ、ある程度社会人経験をした20代を採用する方が良いと考える企業が多いためです。
社員を育成しつつ、戦力化させる手法が根付いた日本企業ならではのニーズであると言えます。
転職のメリット・デメリット
- メリット
１．キャリアの幅広い構築： 20代はキャリアを構築する重要な時期です。異なる業界や職種を経験することで、自分の興味や適性を見つけるチャンスがあります。これにより将来のキャリアの方向性をより具体的に描くことができます。
２．スキル獲得と成長の機会：複数の職場を経験することで、幅広いスキルを獲得し、成長する機会があります。新しい環境での挑戦は、自己成長を促進することができます。
３．ネットワークの拡大：異なる職場や業界で働くことにより、多様な人々とのネットワークが広がります。これが将来のキャリアやビジネスチャンスに繋がる可能性があります。
４．新しい視点の獲得： 異なる職場や企業文化に触れることで、様々な視点を獲得できます。これにより、問題解決能力や柔軟性が高まる可能性があります。
- デメリット
１．安定性の欠如： 頻繁な転職は、安定した雇用状況を築くのに難しさをもたらすことがあります。一つの職場で長期間経験を積むことなく転職を続けると、将来的な雇用安定性に影響を及ぼす可能性があります。
２．経験不足のリスク：頻繁な転職は、一つの職場での経験を深めることが難しくなることがあります。特定の業界や専門知識を築くためには、ある程度の経験が必要です。
３．スキルの転用難：異なる職種への転職を繰り返すと、スキルや経験の転用が難しくなることがあります。将来的な職場選びにおいて、前職のスキルが活かせない場合があります。
４．人間関係への影響：頻繁な転職は、同僚や上司との関係を深める時間が限られることを意味します。人間関係の構築に時間がかかる業界や職種では、これがデメリットとなる可能性があります。
転職を検討する際には、自身の目標や価値観をよく考え、メリットとデメリットをバランス良く検討することが大切です。自分のキャリアに合った選択をすることで、将来の成功への道がより明確になるでしょう。
